青空朗読 · 2026年9月13日 · 6:54
永日小品 元日
著者:夏目 漱石 読み手:黒沢 ちゑ子 時間:6分54秒
雑煮を食って、書斎に引き取ると、しばらくして三四人来た。いずれも若い男である。そのうちの一人がフロックを着ている。着なれないせいか、メルトンに対して妙に遠慮する傾きがある。あとのものは皆和服で、かつ不断着のままだからとんと正月らしくない。この連中がフロックを眺めて、やあ――やあと一ツずつ云った。みんな驚いた証拠である。自分も一番あとで、やあと云った。
フロックは白い手巾を出して、用もない顔を拭いた。そうして、しきりに屠蘇を飲んだ。ほかの連中も大いに膳のものを突ついている。ところへ虚子が車で来た。これは黒い羽織に黒い紋付を着て、極めて旧式にきまっている・・・
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