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Yamagata Walks 〜足跡に眠る、忘れられた山形の物語〜

Yamagata Walks 〜足跡に眠る、忘れられた山形の物語〜

150年前、英国人イザベラ・バードが見た山形。「アジアのアルカディア」と絶賛された理想郷を紐解く旅

Yamagata Walks 〜足跡に眠る、忘れられた山形の物語〜 · 2026年7月2日 · 19:26

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回のエピソードでは、特別に時間をぐっと遡り、およそ150年前の明治時代へと皆さまをご案内します。旅の案内人は、一人の外国人女性。彼女の鋭い眼差しを通して、当時の山形がどのように映っていたのか、その驚きと感動の記録をたどります。


その女性の名は、イザベラ・バード。1878年(明治11年)に日本を旅したイギリス人旅行家であり、その旅の記録は『日本奥地紀行』として今も読み継がれています。当時、多くの外国人が訪れるのは東京や横浜といった開かれた都市が中心でしたが、彼女は文明開化の波がまだ及んでいない「本当の日本」、ありのままの日本人と暮らしを見たいと、当時まだ道もろくに整備されていなかった東北地方を、通訳兼従者の伊藤という青年を一人連れて、北へ北へと旅をしたのです。食事や宿に苦労しながらも、純粋な好奇心と探求心に駆られて旅を続けたバード。その旅路で、彼女は山形県へと足を踏み入れます。


福島県から、険しいことで知られた十三峠を越えて。今でこそ車で通れる道ですが、当時は雨が降れば泥の海となり、馬も進めなくなるほどの難所だったと言います。そんな苦労の多い峠越えの先に、バードの目の前には全く新しい風景が広がりました。それが、米沢を中心とする、実り豊かな置賜盆地だったのです。彼女は、その美しさに心奪われ、こう書き記しています。

「これほど豊かで美しい土地は、日本のどこにもないだろう。ここは、アジアのアルカディアだ」と。

アルカディアとは、ギリシャ神話に出てくる理想郷、桃源郷のこと。それまでの旅で見てきた東北の風景とは全く異なる、どこまでも広がる青々とした水田、豊かに実る果樹、そしてそこで勤勉に働く人々の姿。その全てが調和した風景は、まさに「地上の楽園」のように彼女の目に映ったのでした。家々は手入れが行き届き、人々は礼儀正しく、貧しいながらも誇りを持って暮らしている…バードは、ただ景色が美しいだけでなく、その土地に根付いた文化や精神性の豊かさまでをも感じ取っていたのです。その鋭い観察眼には、加藤も思わず唸ります。


置賜の「アジアのアルカリア」を後にしたバードは、山形県内をさらに北上します。次に立ち寄ったのは赤湯温泉。当時の賑やかさ、特に混浴の公衆浴場の様子には、ヴィクトリア朝時代のイギリス人女性であるバードにとって、かなりのカルチャーショックだったようです。その衝撃から、彼女はもう少し静かな場所を求めて上山温泉へと向かいます。上山では清潔な宿と親切な主人に出会い、長旅の疲れをゆっくりと癒しました。静かな雰囲気や城下町の佇まいを非常に気に入り、良い思い出を作ったようです。


旅はさらに続き、当時の県庁所在地であった山形の町(現在の山形市)へと入ります。ここでバードが驚いたのは、済生館という病院でした。当時の山形県令・三島通庸が中心となって建設した、擬洋風建築のユニークで美しいデザイン、そして最先端の設備を備えたモダンな大病院に、バードは目を見張ります。「まさか東北の地方都市で、西洋の基準に見劣りしないほどの清潔で機能的な病院に出会うとは」と、近代化へと向かう日本の力強い息吹、「進歩」の象徴として高く評価しました。置賜で伝統的な日本の美しさに触れ、山形市では近代化の波に驚く…バードの旅の濃密さに、加藤も感動を隠せません。


そして彼女の旅は最上川の流れに沿うように北へ。新庄を経由し、金山町へと入ります。現在の金山町も、美しい杉の木と白壁の家並みが印象的ですが、その美しさは当時から既にあったようです。バードは緑豊かな金山を「ロマンチックな美しい村」と称賛。町を流れる清らかな水、手入れの行き届いた家々、そして町全体を包む静かで穏やかな雰囲気に深く感銘を受けました。ここでもまた、彼女は理想的な日本の村の姿を見たのかもしれません。


イザベラ・バードの旅は、ただの物見遊山ではありませんでした。彼女は明治という時代の光と影の両方を見ていたのです。伝統的な農村の豊かさと、近代化の象徴である病院。そして道中では、泥道を裸足で歩く人々の貧しさも目にしました。旅の途中、どこへ行っても珍しがられて障子に穴を開けられて覗き見されたり、大変な苦労もあったようですが、バードはそうした好奇心を不快に思いながらも、同時に人々が示す素朴な親切心やもてなしの心には深く感謝しています。彼女の記録は、山形の人々の、慎ましくも誇り高い生き方への、敬意に満ちているように感じられます。


150年もの時を超え、イザベラ・バードの残した記録は、私たちに当時の山形の姿を鮮やかに想像させてくれます。彼女が見た「アジアのアルカディア」は、今の私たちも目にすることができるのでしょうか?

エピソード: Yamagata Walks 〜足跡に眠る、忘れられた山形の物語〜

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