青空朗読 · 2026年8月2日 · 14:44
月と海豹
著者:小川 未明 読み手:西沢 裕子 時間:14分44秒
北方の海は銀色に凍っていました。長い冬の間、太陽はめったにそこへは顔を見せなかったのです。なぜなら、太陽は、陰気なところは、好かなかったからでありました。そして、海は、ちょうど死んだ魚の眼のようにどんよりと曇って、毎日雪が降っていました。
一疋の親の海豹が、氷山のいただきにうずくまって、ぼんやりとあたりを見まわしていました。その海豹は、やさしい心を持った海豹でありました。秋のはじめに、どこへか姿の見えなくなった自分のいとしい子供のことを忘れずに、こうして、毎日あたりを見まわしているのであります・・・
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