青空朗読 · 2026年7月5日 · 21:19
律子と貞子
著者:太宰 治 読み手:齋藤 こまり 時間:21分19秒
大学生、三浦憲治君は、ことしの十二月に大学を卒業し、卒業と同時に故郷へ帰り、徴兵検査を受けた。極度の近視眼のため、丙種でした、恥ずかしい気がします、と私の家へ遊びに来て報告した。
「田舎の中学校の先生をします。結婚するかも知れません。」
「もう、きまっているのか。」
「ええ。中学校のほうは、きまっているのです。」
「結婚のほうは、自信無しか。極度の近視眼は結婚のほうにも差支えるか。」
「まさか。」三浦君は苦笑して、次のような羨やむべき艶聞を語った。艶聞というものは、語るほうは楽しそうだが、聞くほうは、それほど楽しくないものである。私も我慢して聞いたのだから、読者も、しばらく我慢して聞いてやって下さい・・・
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